日記/2010-11

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2010-11-24

十一月の朝顔

 

2010/11/24(水)撮影


2010-11-10

カテゴリー「STUDIO VOICE」を追加

 

 昨日の「PROGRESSIVE DISKO DISC GUIDE 100」のページの追加でスタジオ・ボイスの記事を見て作成したリストも10個ほどになったことから、新たに「STUDIO VOICE」というカテゴリーを追加してみました。このカテゴリーに登録されているページは以下の通り。

 先日、Twitter経由で「洋楽オルタナティヴ・ミュージック・ベスト100」のページに(本サイトとしては)大量のアクセスがあり、「なんだスタジオ・ボイス関連の記事には未だ需要があるんだ」と思ったことも、このカテゴリー新設の理由の一つです。
 

2010-11-9

PROGRESSIVE DISKO DISC GUIDE 100

 

sv0606.jpg

 スタジオ・ボイス366号(2006年6月号)の特集「プログレッシヴ・ディスコ PROGRESSIVE DISKO」の「PROGRESSIVE DISKO DISC GUIDE 100」をリストにしてみた。
 リストの各ページには、いつものように、Discogs、YouTube、Amazonでの検索結果を表示している。一部、Amazonの代わりにTechniqueでの検索結果だったり、Discogsでの検索結果の代わりにウェブサイトへのリンクが書いてあるだけだったりするページもあるが、それはそのままでは適当な検索結果が得られなかった場合の苦肉の策である。それでも各々の検索結果が、いまひとつ適切ではないこともあるかと思うが、そこは温かい目で見ていただきたい。
 100枚のディスクはタイプ別に分類されおり、タイプ毎に枚数や選者が異なっている。

#タイプ選者
1-30PROGRESSIVE ROCK坂本理 / 湯浅学 / 吉本秀純
31-40ITALO DISCO真利夫
41-60DISCO DUB河村祐介
61-80COSMICDISCOSESSION(Chee+Dr.Nishimura)
81-90RE-EDITCrystal
91-100MIX CD岡本俊浩

 以下に、いつものようにスタジオ・ボイス節全開の、この特集のリードを引用する。

何千回書いたかしれない“リヴァイヴァル”ブームの真打ち、もしくはレア・グルーヴの復権、あるいは単にニッチなだけか。ハウス・ミュージックがアングラ化し、イタロを招き、ディスコ・ダブに橋渡される。ついにはコズミックなるタームまでが掘り返され、ビートはいつしか歪なイーヴン・キックを繰り出しはじめる。後方を向いたまま、前方に疾駆するような、不確かな足取りとサイケデリックな情緒、ないしは抽象と悦楽。ここ数年のダンスフロアでなにがあったか、以後数年の音楽シーンになにが起こり得るのか。思考を充填し、いざプログレよ!
Page Artist Album Label
PROGRESSIVE DISKO/1A.K.Klosowski & Pyrolator Home Taping Is Killing Music ata tak
PROGRESSIVE DISKO/2BRAINTICKET Cottonwoodhill Phonag
PROGRESSIVE DISKO/3BRIAN ENO On Land EG
PROGRESSIVE DISKO/4BURHAN OCAL-PETE NAMLOOK Sultan Osman Universal
PROGRESSIVE DISKO/5CONRAD SCHNITZLER Ballet Statique Spalax
PROGRESSIVE DISKO/6コンラッド・シュニッツラー ロート(赤) キャプテン・トリップ
PROGRESSIVE DISKO/7DAVID BEHRMAN Leapday Night LOVELY
PROGRESSIVE DISKO/8DAVID TUDOR Neural Synthesis LOVELY
PROGRESSIVE DISKO/9ディーター・メビウス ブロッチ キャプテン・トリップ
PROGRESSIVE DISKO/10エンブリオ 激昂 ユニバーサル/Brain
PROGRESSIVE DISKO/11ENSEMBLE MODERN Steve Reich:Music For 18 Musicians BMG
PROGRESSIVE DISKO/12FAUST Faust Polydor
PROGRESSIVE DISKO/13フロッシン リード・シンガー Yacca
PROGRESSIVE DISKO/14FRIPP&ENO No Pussyfooting EG
PROGRESSIVE DISKO/15グル・グル マニと友人達 ベル・アンティーク
PROGRESSIVE DISKO/16JON APPLETON Contes de la Memoire DIFFUSION I MeDIA
PROGRESSIVE DISKO/17JON HASSELL Aka Darbari Java[Magic Realism] EG
PROGRESSIVE DISKO/18LADY JUNE Linguistic Leprosy See for Miles
PROGRESSIVE DISKO/19ムーラー ウォ・ヤ・デーモンズ・ポゼッスト EM
PROGRESSIVE DISKO/20大野松雄 大野松雄の音響世界2 キング
PROGRESSIVE DISKO/21POPOL VUH In Den Garten Pharaos キング
PROGRESSIVE DISKO/22RICHARD PINHAS Iceland Cuneiform
PROGRESSIVE DISKO/23リック・ウェイクマン 地底探索(Journey To The Centre Of The Earth) A&M
PROGRESSIVE DISKO/24TANGERINE DREAM Zeit Castle
PROGRESSIVE DISKO/25TIM BLAKE Blake's New Jerusalem Barklay
PROGRESSIVE DISKO/26TIMECONTROL Live at Bayside Electr-ohm
PROGRESSIVE DISKO/27VANGELIS Beaubourg Windham Hill
PROGRESSIVE DISKO/28WHITE NOISE An Electric Storm Polygram International
PROGRESSIVE DISKO/29イエス リレイヤー ワーナー
PROGRESSIVE DISKO/30ZAZOU/BIKAYE/CY1 Noir et Blanc Crammed
PROGRESSIVE DISKO/31CHARLIE Space Woman ZYX
PROGRESSIVE DISKO/32G.A.N.G. KKK. Recordbreaker
PROGRESSIVE DISKO/33GIORGIO FARINA Discocross RCA
PROGRESSIVE DISKO/34N.O.I.A True Love Itarian
PROGRESSIVE DISKO/35THE MASK Up An' Away Banana
PROGRESSIVE DISKO/36LAMA Love On The Rocks Carrere
PROGRESSIVE DISKO/37MR.FLAGIO Take A Chance ZYX
PROGRESSIVE DISKO/38EXPANSIVES Life With You Leader
PROGRESSIVE DISKO/39SUN-LA-SHAN Catch Super Radio
PROGRESSIVE DISKO/40TROPHY Slow Flight Fuzz Dance
PROGRESSIVE DISKO/41LINDSTROM & PRINS THOMAS Lindstrom & Prins Thomas Eskimo
PROGRESSIVE DISKO/42!!! Hello? Is This Thing On? Warp
PROGRESSIVE DISKO/43CRUE-L GRAND ORCHESTRA Remixes Crue-L
PROGRESSIVE DISKO/44BIG TWO HUNDRED Your Personal Filth DC
PROGRESSIVE DISKO/45EMPEROR MACHINE Aimee Tallulah Is Hypnotised DC
PROGRESSIVE DISKO/46CHICKEN LIPS Making Faces Ruch!
PROGRESSIVE DISKO/47PADDED CELL Are You Anywhere ? DC
PROGRESSIVE DISKO/48FRAN-KEY Ecstacy Romance Crue-L
PROGRESSIVE DISKO/49ALTZ Maxmotion Lastrum
PROGRESSIVE DISKO/50TRULZ & ROBIN feat. BASEMAN Turn My Head Planetnoize
PROGRESSIVE DISKO/51TODD TERJE Mjodalen Dickoklubb Full Pupp
PROGRESSIVE DISKO/52BRENNAN GREEN Maple Leaf Madness EP Bear Funk
PROGRESSIVE DISKO/53V.A. This Is Rong Music ミュージック・マイン
PROGRESSIVE DISKO/54MICHOACAN 2 Bullets EP Grayhound
PROGRESSIVE DISKO/55TUSSLE Disco D'Oro Rong Music
PROGRESSIVE DISKO/56IDJUT BOYS More Or Less U-Star
PROGRESSIVE DISKO/57PHANTOM HAND BAND Bangers N Mash Cottage
PROGRESSIVE DISKO/58DIRTY MINDS I'm For Pleasure Eskimo
PROGRESSIVE DISKO/59REKID Era EP Soul Jazz
PROGRESSIVE DISKO/60LAZYBOY Police Dogs Bonfire Sunday Best
PROGRESSIVE DISKO/61KLAUS SCHULZE Macksy Brain
PROGRESSIVE DISKO/62ROBERT SCHROEDER Mosaique Innovative Communication
PROGRESSIVE DISKO/63IRMIN SCHMIDT Filmmusik Vol.2 Spoon
PROGRESSIVE DISKO/64SHADOWFAX The Dreams Of Children Windham Hill
PROGRESSIVE DISKO/65GRAUZONE Eisbaer Welt
PROGRESSIVE DISKO/66ZA ZA Za Za Blow Up
PROGRESSIVE DISKO/67AMBROSE REYNOLDS Greatest Hits Zulu
PROGRESSIVE DISKO/68CARTE DE SEJOUR Ramsa Pi'ra:nha
PROGRESSIVE DISKO/69BIRTH CONTROL Hoodoo Man CBS
PROGRESSIVE DISKO/70MANFRED MANN'S EARTH BAND Chance Warner
PROGRESSIVE DISKO/71TONY BANKS The Fugitive The Famous Charisma Label
PROGRESSIVE DISKO/72VANGELIS The Dragon Oxford
PROGRESSIVE DISKO/73FUHRS & FROHLING Strings Brain
PROGRESSIVE DISKO/74GANDALF Journey To An Imaginary Land WEA
PROGRESSIVE DISKO/75TRIBUTE New Views Arc Music
PROGRESSIVE DISKO/76ORIENTAL WIND Bazaar Sonet
PROGRESSIVE DISKO/77喜多郎 天界 - Astral Trip Zen
PROGRESSIVE DISKO/78NEURONIUM Invisible Views Roadrunner
PROGRESSIVE DISKO/79CONRAD SCHNITZLER Con 3 SKY
PROGRESSIVE DISKO/80ALAN PARSONS PROJECT Stereotomy Arista
PROGRESSIVE DISKO/81MONTREAL SOUND Music Smash Disco
PROGRESSIVE DISKO/82O'JAYS I Love Music Re-edit
PROGRESSIVE DISKO/83PATTI LaBELLE Last Night A DJ Saved My Life Nuphonic
PROGRESSIVE DISKO/84THEO PARRISH Ugly Edits vol.1 Ugly Edits
PROGRESSIVE DISKO/85V.A. This Way Moton
PROGRESSIVE DISKO/86WILLIE DRAGG Tell You In Dub Better Days
PROGRESSIVE DISKO/87RHYTHM DOCTOR Journey To Obscursville Lost Heroes
PROGRESSIVE DISKO/88CRICCO CASTELLI Life Is Changing Aroma
PROGRESSIVE DISKO/89ERIK & FIEDEL Donna MMM
PROGRESSIVE DISKO/90PEECHBOY Untitled 非売品
PROGRESSIVE DISKO/91BILL BREWSTER Praxis Hooj Choons
PROGRESSIVE DISKO/92MOODMAN Sessions Vol. 1: Moodman Presents Weekender Hot-Cha
PROGRESSIVE DISKO/93BJORN TORSKE DJ World Series: Nordic Chill DJ Magazine
PROGRESSIVE DISKO/94CHICKEN LIPS DJ-Kicks !K7
PROGRESSIVE DISKO/95DJ COSMO The Disco Tech of...DJ Cosmo Yellow Productions
PROGRESSIVE DISKO/96Crystal MADE IN JAPAN CLASICCS VOL.1 "DISCO TOKIO" 非売品
PROGRESSIVE DISKO/97KENJI TAKIMI Sessions Vol. 2: The DJ At The Gates Of Dawn - Dancestonelive Music Mine
PROGRESSIVE DISKO/98DANIEL WANG Sessions Vol. 3: Come On Let's Fly - A Special Disco Mix From Daniel Wang Music Mine
PROGRESSIVE DISKO/99DR.NISHIMURA New Age of Baroque 自主
PROGRESSIVE DISKO/100NICK THE RECORD Life Force Cutting Edge

 特集記事中に「COSMIC」の創始者ダニエレ・バルデッリのインタビューが掲載されている。

「ハロー皆さん! ワタシがダニエレ・バルデッリです。私はたくさんの、異なるプロジェクトを手掛けている。それが可能なのは、私が1969年から音楽を聴き続けているからであり、そのおかげで“全て”を聴いてきたから。私には異なる二つの側面がある。それは、コズミック・サウンドとファンク。この二つがあるからこそ、いろいろな音楽につながっていく。オーケー?」

 ずっとこんな調子。
 記事の冒頭、「ヨーロッパでの認知は連綿とされていたが、なぜか日本ではその発見がここ数年で行われた『COSMIC』というイタリアのディスコ・スタイル」とあるが、YouTubeにあるダニエレ・バルデッリの曲を何曲か聴いてみた限りでは、今さら発見しなくてもよかったんじゃないの、と思わないでもない。

 
 そのインタビューの終わりに以下のような一節を見つけた。

――YMOを最初に聴いたときの感想はどうでしたか?
「初めてYMOを聴いたときの気持ちは……良かったぞ。まさしく“コズミック”なサウンドだと思った。リューイチ・サカモトは大変優れたアーティストだと思う。彼のレコードは、多分全てもっている。『コンピューター・ゲーム』は、コズミック・サウンドのトップ10に入る名曲だ」
Yellow Magic Orchestra (YMO) - Computer Games


2010-11-5

UNIX

 

 横浜のヨドバシカメラの向かいに発見。

unix01.JPG

unix02.JPG

2010/11/04(木)撮影
 
 公式サイトのURLは、http://www.unix.co.jp/


2010-11-3

攘夷の近現代史

 

 
 少し前に、加藤陽子「戦争の日本近現代史」を読み終えた。この本の第二講「軍備拡張論はいかにして受け入れられたか」に、以下のような記述がある。

 一八六九(明治二)年二月の岩倉具視意見書「外交之事」からは、当時、議定兼補相であった岩倉が、おおよそ次のような判断をしていたことがわかります。――朝廷に政権が移れば天下の人は、必ず攘夷の令が下ると考えただろう。しかし、どうしたことか、政府は、イギリス・フランス・オランダ・アメリカなどの公使を参朝させている。これでは人人が、朝廷が先に攘夷を主張したのは「畢竟幕府を倒さんが為の謀略なり」とみてもしかたがないではないか。今日、政府がなぜ外国と交際を開かざるをえないのか、その理由を了解する者は天下にほとんどいないはずである。これは問題ではないか――。

 加藤はこの「問題」に対する答えとして、吉野作造の説を紹介している。それは、単に幕府を倒すための口実として攘夷を唱えていただけだったのではないかという非難を受け、窮地に立たされた政府は、国際情勢が諸外国と和親の方向に進むしか選択の余地のないものだという、みずからの置かれている状況を国民に率直に披露したというもの。それによって、明治初年の人々があれほど急に近代的政治意識を身につけられたのだ、と吉野は述べている。
 結局のところ、彼我の国力、軍事力の差が大きすぎて、実際問題、攘夷など不可能だった、というのが真実なのであろう。
 とはいいながら、確かに、攘夷から開国へという国是の大転換が、当時の人々にどのように受容されていったのかが気になった。
 

攘夷の幕末史
講談社
町田 明広
楽天 Amazon

 
 手前勝手な解釈だが、町田明広「攘夷の幕末史」に、そのあたりのことが書いてあったように思う。以下は多分に私見がまじった抜粋とまとめ。
 帯に「坂本龍馬も、勝海舟も、みんな『攘夷派』だった」とあるように、町田によれば、幕末(同書で主に扱う文久期)には、例外なく日本人すべてが尊皇であり、攘夷であった。その思想の淵源は古代中国の華夷思想にあり、これは簡単に言えば中国が一番優れているという考え方で、六世紀以降の隋・唐の時代にはすでに東アジア全体に浸透し、明・清の時代に最盛期を迎えた。日本は中国から、他の文物同様にこの華夷思想の枠組みを輸入しながら、中国中心の華夷体制から脱却し、一番優れているのは中国ではなく日本であるとする、日本中心の華夷思想を抱くようになる。遣隋使、遣唐使の昔には、中国に対して日本が朝貢していたその体制から、中国からみて日本が辺境にあるという地の利もあって抜け出し、鎖国して他国との交渉を絶った上で、日本に対して琉球、朝鮮を朝貢させる(朝鮮については本来「通信使」なのだが、幕府は国内向けには琉球同様に「来貢使」として取り扱った)ことで日本型冊封体制を作りだし、「東夷の小帝国」を形成したのである。いわば「お山の大将」の状態が江戸時代ずっと続いたわけで、その間に「日本は世界の中心である」「外人は夷狄禽獣である」という攘夷思想が育まれていった。こうして幕末の頃には、日本人全員が攘夷主義者になっていたというわけである。
 全員が攘夷主義者であれば、攘夷か否かという点での対立はない。町田によれば、攘夷は攘夷でも「大攘夷」と「小攘夷」という思想の違いに、対立軸はあった。以下、同書の序章「幕末のイメージと攘夷」から引用する。

「大攘夷」とは、現状の武備では、西欧列強と戦えば必ず負けるとの認識に立ち、無謀な攘夷を否定する考えだった。現行の通商条約を容認し、その利益によってじゅうぶんな武備を調えた暁に、海外侵出をおこなうと主張したのだ。公武合体派と呼ばれた人たちは、ここに属した。井伊をはじめ、龍馬が批判した幕閣もこの考えであり、その本質は、やはり攘夷であった。
 一方で「小攘夷」とは、勅許を得ずに締結された現行の通商条約を、即時に、しかも一方的に破棄して、それによる対外戦争も辞さないとする破約攘夷を主張するものだった。しかも、「小攘夷」を唱える人びとは実力行使をいとわず、しきりに外国人殺傷や外国船砲撃といった過激な行為をくりかえした。尊王攘夷派と呼ばれた人たちは、ここに属する。すなわち、当時の政争は「大攘夷」vs.「小攘夷」の構図なのである。

 つまり、幕末の政争は「大攘夷」と「小攘夷」という攘夷主義者同士の抗争だった。状況の変転とともに、結局最後には全員が「大攘夷」に転向しただけ(対立の重心が「倒幕」「佐幕」という単なる権力闘争へと移っていった)。国是が攘夷から開国へと転換されたわけではなく、「小攘夷」から「大攘夷」へと変更されただけであって、攘夷主義は明治に至っても継続していたのである。以下、やはり序章から引用する。

 こうして幕府は、朝鮮・琉球を朝貢国と規定し、日本型冊封体制を完成したが、本来、朝鮮とは独立した国家同士であり、現実との大きな隔たりが見られる。これが幕末明治期の征韓論を形成する起点となり、そして、この朝鮮をめぐるロシアとの最終的な覇権争いが、日露戦争であったのだ。

 なおも攘夷は続く。以下、あとがきから。

 昭和四十年代に小学生であった私は、いまから十五年ほど前に亡くなった、満州に出征していた祖父の戦争体験談を聞くことが好きであった。その大半は、引き揚げにまつわる苦労話であったが、筆者にとっては時折祖父が口を滑らす、日本兵の耳をふさぎたくなる行為に意識が集中していた。
 しかし、そんな私の雰囲気を察してか、「日本人は、中国人や朝鮮人に本当にひどいことをした。もう、これ以上は話さない」というフレーズで話は打ち切られるのが常だった。私は「本当に勝てると思っていたのか?」というような質問を繰り返したが、「薄薄はどうかなと、思わないこともなかったが、神州が最後には勝つであろうと信じていた。それにしても、陛下のために攘夷が叶わなかったことが残念である」と祖父は悔しがっていた。
 当時、NHK大河ドラマ「勝海舟」で幕末に目覚めはじめていた筆者にとって、祖父が使う「攘夷」という言葉は鮮烈であり、驚きであった。それ以来、幕末の攘夷がなぜ太平洋戦争まで影を落としていたのかが、大きなテーマになっている。