日記/2008-3-8
官能的変態(数学者|音楽家)
鳥飼否宇の「官能的 四つの狂気」の主人公は、ストーキングや覗きが専門の変態数学者。興奮すればするほど頭が冴えるという特異体質の持ち主でもあり、彼自身は「フィールドワーク」と呼んでいる変態的行為を行うことによって興奮し、さえない中年男から頭脳明晰な理論家に「変態」する。
そんな彼が、夜の町をさまようミニスカートの女をえんえんつけ回したり、研究室から見えるビルの窓を双眼鏡で覗いたりという「フィールドワーク」にいそしんでいる最中、彼の頭の中にはある種の音楽が流れる。
それは例えば、スティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」。
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またあるときは、イアニス・クセナキスの「メタスタシス」。
彼らは作曲に数学的手法を用いたことで有名で、例えば殊能将之の日記に、クセナキスの以下のような手法が紹介されている。
かつてイアニス・クセナキスは、こんなことを考えた。 平均律の各音に下から0, 1, 2, 3, ...と番号をつける(MIDIノートを想定してもらえばいい) すると、長音階(ドレミファソラシド)はこうなる。 0, 2, 4, 5, 7, 9, 11, 12, 14, 16, 17, 19, 21, 23 ... さて、このような数列をつくりだす式は何か? 「pで割るとq余る」ことをMp(q)と表記すると、たとえば以下のような式が考えられる (わたしが考えた式なのでクセナキスの式とは異なる)。 (M3(2)∧~M4(0))∨(~M3(2)∧M4(0))∨(M3(1)∧M4(3))∨(M3(0)∧M4(1)) この式のM3, M4をM5, M7に置き換えると、12(オクターヴ)ではなく、 35(2オクターヴ+半音11)で周期する音階が得られる。 このような音階を「非オクターヴ音階(gammes non-octaviantes)」という。
このような数学的=非音楽的手法を用いたという意味で、彼らは変態音楽家と言える。
「数学者が好きなのは数学的音楽家」、もっと言えば「変態数学者が好きなのは変態音楽家」という設定には「そのままやんけ!」と突っ込まざるを得ないが、私、この変態数学者の気持ち、わからないでもない。
彼らの曲を聴いているときに訪れる、何とも言えないグルグル感は、なにかいかがわしい。確かに「変態」に通じるものがあると思う。ストーカーや覗き魔的「変態」にも、さなぎから蝶への「変態」にも。
ところで、不勉強な私は、変態数学者が敬愛するもう一人の音楽家「松平頼暁」のことを知らなかった。変態数学者の頭の中で流れるのは「ブリリアンシー」と「カインの犠牲者達のために」の二曲なのだが、前者についてはAmazonで検索しても引っかからなかった。後者についてはこれ。
別のサイトで、とても短い時間だが試聴できる。
それっぽい!
松平頼暁も、当然ながらと言うか、やはり同類の音楽家のようで。