日記/2009-2-22

最終更新時間:2009年02月22日 12時39分32秒

「トンデモ科学の世界」と「異端の脳がホンモノ!」

 竹内薫と茂木健一郎の共著「トンデモ科学の世界」を読了。前半は竹内が「異端の科学の世界」を、後半は茂木が「異端の心脳科学の世界」を、それぞれ紹介している。
 少なくとも後半の茂木担当パートは面白かった。本書は1995年に執筆された、茂木にとっての「処女作」にあたる。「脳と仮想」など、その後に書かれた茂木の他の著作を読んでも、彼が何を言いたいのか、いまいちピンとこなかったが、本書を読んで、彼の問題意識がわかったような気がした。
 
 前半の竹内が執筆している部分については、なんだか散漫な印象しかなくてあまり感心しなかったが、別の意味で面白かった。
 本書のプロローグで、竹内は「と学会」批判を繰り広げているのだが、それがなんだか的外れで、「何言ってるの?」という感じなのである。正直、その際立ったトンチンカンぶりから、竹内担当パートでは、この部分が一番面白かった。
 アマゾンの書評によると、この「トンデモ科学の世界」は、「異端の脳がホンモノ!」というタイトルで2006年に文庫化されているのだが、

異端の脳がホンモノ!
大和書房
竹内薫/茂木健一郎
楽天 Amazon

この最も面白い部分がカットされているとのこと。
 なんともったいない!分量も大したことはないので、以下に引用しておく。

プロローグ

「と学会」の発想は、「受験の科学の世界」

(中略。「異端の…」の18ページ3行目から19ページ3行目までと同じ)

『トンデモ本の世界』とまっ向から対立する「哲学」を呈示したい

 この本の題名の『トンデモ科学の世界』は、いうまでもなく、『トンデモ本の世界』のパロディーである。でも、なぜ、パロディーなのか。
『トンデモ本の世界』という本は、「と学会」(?)が、世に出ている「とんでもない本」を取り上げて、非難、嘲笑を浴びせる内容になっており、早い話が、優越感に浸った「頭のいい連中」(?)が「頭のわるい連中」をコケにして喜ぶという、おきまりの構図で成り立っている。
 もちろん、「と学会」という実体のある学会が存在するわけではなく、山本弘というSF作家を中心に、現在の学界の権威ある通説を無批判に受け入れて、異端説を、これは間違い、と断じて葬り去るというものなのだ。私の見る限り、そのシニカルでネガティブな姿勢には、夢もロマンもまったく感じられない。
 しかし、世界のすべてのことが、これは正しい、これは間違い、という具合に、単純な○×式で片づくなんて本当だろうか。
「不思議」な現象など、世界のどこにも存在せず、森羅万象すべてがきっちりと科学的に説明できるとでもいうのだろうか。
『トンデモ本の世界』では、科学的な説明、という言葉自体が「水戸黄門」の葵のご紋の印籠のように絶対的な権威になっている。これは、ナンカ変ではなかろうか。
「と学会」には申し訳ないが、単純な○×式思考でケリがつくのは、一部のマークシート式受験問題だけである。現実の世界は、○×式ではうまくいかないし、もちろん、科学の世界も○×式ではうまくいかない。科学の世界が、つねに白黒のつく○×世界だと思っている人は、「受験の科学の世界」あるいは「学校の科学の世界」だけが科学のすべてだと勘違いしているに違いない。

(中略。「異端の…」の20ページ2行目から10行目までと同じ)

『トンデモ科学の世界』は、『トンデモ本の世界』とは正反対の哲学に貫かれている。
 われわれは、
「みんなの信じている権威が必ずしも正しくない可能性を指摘したい」
「科学が単純な○×式では本質的にうまくいかないことを力説したい」
「異端説を嘲笑するのではなく、異端説の持つ魅力にせまってみたい」
以上のことを、
「『なんとか学会』という隠れ蓑は使わずに、実名の人物が、堂々と主張する」

 ここまで書いておきながら、肝心の内容は「『トンデモ本の世界』のパロディー」というよりも「劣化コピー」という感じなんだもんなあ……。
 
 さらに竹内は、「異端の脳がホンモノ!」の「文庫版まえがき」で以下のように記している。

 10年前にこの本を出したとき、さまざまな人たちから叩かれた憶えがある。有名な大学教授からも酷評されたし、「と学会」という集団からも総攻撃を喰らった。

(中略)

 10年たってみて、なにが変わったかといえば、本の中で私が書いたことは、実は文化的に「オモシロイ」のであり、ある意味「知的」なのであり、酷評したり、叩いたりしていた人々には、ユーモアの感覚とバランスのとれた知性が欠けていただけ……こんなことを書くと、ふたたび真面目な御仁たちから集中砲火を浴びるかもしれないが、私の正直な実感である。

 それなら「と学会」を批判した部分も、堂々と削除しなければよかったのに。
 

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