日記/2009-7-5

最終更新時間:2009年07月05日 19時17分29秒

ディープピープル〜ボクシング世界チャンピオン〜

 

 昨夜(2009/07/04)、NHKで放送されていた「ディープピープル」が非常に面白かった。こちらのページによると、2009/05/28に放送されたものの再放送。
 レギュラー化するかどうか未定のパイロット版のような番組で、先のページにある内容の紹介は、

同じジャンルを極めた3人のカリスマたちが、評論家やアマチュアには語れない「本物のディープな世界」を語りあう、新しいスタイルのトーク番組

というもの。今回語り合ったのは、以下の3人の現役・元ボクシング世界チャンピオン。なお、説明文は番組のテロップからの引用、YouTubeの動画はそれぞれの入場曲。

長谷川穂積
WBC世界バンタム級王者。28戦26勝(10KO)2敗。現在8連続防衛中。2005年、最強と言われたウィラポンを倒し王座に。日本ボクシング界のエース。

Once You Had Gold-Enya

畑山隆則
元WBA世界Sフェザー級、ライト級王者。29戦24勝(19KO)2敗3分。日本人4人目の2階級制覇を果たした。打ち合いにこだわった「ケンカファイター」。2000年の坂本博之戦はボクシング史に残る一戦。
KYOSUKE HIMURO -NATIVE STRANGER-

浜田剛史
元WBC世界スーパーフライ級王者。24戦21勝(19KO)2敗1NC。15試合連続KOの日本記録保持者。自らのこぶしをも砕くハードパンチャー。4度の左手骨折を乗り越え、王座獲得。
holding out for a hero Bonnie Tyler

 
 何度も防衛を重ねた(元)世界チャンピオンの3人が語る話はいずれも興味深いもので、特に長谷川穂積の技術論には、耳を疑うほどの驚きもあった。
 だが、私にとって、より興味深かったのは、同じ話題に対する3人の見解の分かれ方だった。
 ボクシングを極めた3人だけに、ボクシングに対する考えは一致しているのか、それとも、三者三様のボクシングスタイルから、その考えもバラバラに分かれるのか。
 実際には、もちろん3人の意見が一致する場合もあったが、多くの話題で二対一に意見が分かれていた。それも、二対一の組み合わせが、話題によって違っていた。
 以下に、話題ごとに、3人の意見や体験の分かれ方を表にまとめてみた。同じ意見のセルを同じ色にしてある。画面からはどちらの考えなのか判断できなかった場合は灰色とした。当たり前だが、色分けは独断で決め、例えば拳の骨折の話題などは、長谷川と浜田の対処の仕方が異なるのだが、そこに通じるものを感じたので同じと見なした。

長谷川畑山浜田
効くのはキレのパンチか、痛いパンチか
ウィラポンを倒したのは感触が残らないくらい力を抜いて打った、スピードとタイミングの、キレのパンチ。相手がすごい勢いで倒れたときは、肩の力が抜けた、え?こんなパンチで倒れるの?というようなキレのパンチ。効くのは、肩まで衝撃が伝わるくらいの、痛いパンチ。相手を倒そうと、どうしても力んでしまうので、キレのパンチを打つのは難しい。
まぶたを切っての出血とバッティング
頭から突っ込んでくる選手はやりにくい。バッティングで両まぶたの上を切ったことがある。出血で試合を止められてしまうかもしれないという焦りからスタミナを消耗した。その意味で、目を切られたそのパンチが、今まで一番効いたパンチ。バッティングされるのは自分が未熟。本当に強い選手はそれをさせない。
相手の呼吸を見てパンチを打つ
相手が息を吸うタイミングでパンチを打つ。息を吸っているときはパンチも打てないし、ディフェンスもできない。「確かに息吸ってるときにボディをもらうと効くけど……」長谷川の言葉に驚きを隠せない。 
1秒間
二人の話にうなずく。そんじょそこらの科学者なんかより、世界戦を闘うボクサーの方がよほど頭を使っている。一秒の間に、バアッ、バアッ、バアッといろんなことを考えている。自分がこうやると相手はどう動くか。五手、六手先まで予想を組み立て、これじゃあお客さんは喜ばんな、というところまで、試合中に考える。1秒あれば、いろんなことが考えられる。
相手をあやつる法則
相手にアッパーを打ってほしいときには、相手がアッパーを打ちたくなる位置へ自分の頭を持っていき、カウンターを狙う。7割くらいの確率で成功。「どうだったかな……。やっぱり、八度も防衛してるチャンピオンは言うことが違いますね」画面に映っていないが、畑山の言葉に頷いている気配。
強気と弱気
試合前の控え室でバンテージを巻いてるときまで、試合が中止になることを願うくらいの弱気。諦めがつくのは試合開始のゴングが鳴ったとき。苦しい練習も相手を殴るため。試合しなくてもファイトマネーをくれると言われても「コイツをぶっ飛ばさないと納得できない」というほどの強気。 
 対坂本戦、相手の耳からの出血に、人を殺してしまうんじゃないかという恐怖を覚えた。 
拳の骨折
痛めている拳を、アルバイトの合間に、かたいものにコツコツぶつけて鍛えた。浜田の手を見て感心することしきり。骨折した左の拳は世界戦まで温存し、右の拳は何があっても絶対折れないように、四角い鉄柱を毎日30分打ち続けた。
血尿
出たことがない。自分がサウスポー、相手の多くが右なので、お互いにボディを打たないから?世界戦のたびに血尿は出たが、対坂本戦の後は、醤油色というかコーラ色というか、そういう血尿が出た。「きつい試合の場合は、けっこうみんなあるんじゃないかな」
減量
減量すればするほど感覚が研ぎ澄まされていく。減量していくと、拳銃で撃たれてもあたらないと思うほど感覚が鋭くなっていく。二人の言葉にうなずく。

 ゲスト解説の関根勤の的確な補足もよかった。
 ぜひレギュラー番組化してほしいが、そうなると、こちらの番組同様、どんな3人が集まるかによって、当たり外れが激しくなると思われる。