日記/2016-6-21

SONY MDR-HW700DSはイマドキの4K環境には対応してないこととその解決策

 

前置き

 2005年から2015年までの10年間、オーディオテクニカのワイヤレスヘッドフォンATH-DCL3000を使っていた。音質やバーチャルサラウンドの効果はそこそこといったところだったが、ワイヤレスという大きな利便性は大変気に入って、快適に利用していた。
 昨年(2015年)、テレビを東芝の55J10Xという4K対応機に買い替えたのを契機に、AV環境を一新することにした。ATH-DCL3000と同じころに購入した、D端子しか備えていない古いAVアンプも、今や当たり前だが、入出力ともにHDMI端子、4KやHDCP2.2にも対応した、パイオニアのVSA-830に買い替えた。すると、古いAVアンプにはあった光デジタル出力端子がVSA-830にはなく(というか、最近のAVアンプには光デジタル出力を備えていないものが多い)、光デジタル入力が基本であるATH-DCL3000は使えなくなってしまった(ATH-DCL3000にはアナログLINE入力もあるが、VSA-830はアナログLINE出力すら備えていない)。
 この1年、ワイヤレスヘッドフォンなしの生活を送ってきたが、10年間も続いたあの快適な生活が忘れられず、つい先日、SONYのMDR-HW700DSをAmazonで衝動買いしてしまった。後々、よく調べもせずに買ってしまったことを後悔することになるのだが、結局じっくり調べてみても、ATH-DCL3000相当の機能(バーチャルサラウンドに対応しているワイヤレスヘッドフォン)を備えていて、光デジタル入力ではなく、HDMI入力に対応しているものは、このMDR-HW700DSしかないということがわかって、しかたないかな、とあきらめもついた。

MDR-HW700DS導入前

 MDR-HW700DSを組み込む前のシステムの構成は以下のような感じ(AVアンプには他にもPS4やNASなんかもつながっているが、図からは割愛)。
 TVとAVアンプの間が、HDMIケーブルだけでなく、光デジタルケーブルでも接続されているのは、TVの仕様上しかたがないため。TVのHDMI入力の1番はARCに対応しているが4Kには未対応、そこで4K入力に対応しているHDMI入力の3番を使っているのだが、こっちはARCに未対応、そのため映像はHDMIの3番から入力し、音声は光デジタルで入力しているという次第。
 
av-setting01.jpg

MDR-HW700DS導入後と不具合

 ここに衝動買いしたMDR-HW700DSを追加することになったのだが、取扱説明書の「接続例5:再生機器と本機とのあいだにAVアンプを使って接続する」にしたがって接続することになった。その理由は、HDMI接続すべき機器が5台もあり、MDR-HW700DSの入力端子数(3つ)よりも多いため、切り替えを今までどおりAVアンプで行わざるを得ないためである。
 MDR-HW700DSを加えた後の構成は以下のようになる。
 
av-setting02.jpg
 
 この構成でスピーカーから音を出す場合の信号の流れは以下のようになる。
 

signal-A.jpg

signal-B.jpg

 
 AはTVを見る場合、BはJCOMのSTB(HumaxのUHD-2500)を見る場合である。Aの場合もBの場合も、MDR-HW700DSは映像も音声も素通し(パススルー)すればよい。SONYのウェブサイトでも確認できるように、MDR-HW700DSは「4Kパススルー」対応をうたっている。
 
sony01.jpg
 

4Kパススルーに対応
4K映像信号の入力に対応。4K対応ディスプレイやプロジェクターへ出力が可能です。

※ 以下信号のパススルーに対応しています(3840×2160p 29.97/30Hz、3840×2160p 25Hz、3840×2160p 23.98/24Hz、4096x2160p 23.98/24Hz)。映像ソース機器側の出力信号仕様および映像表示機器側の入力信号仕様もあわせてご確認ください

 
 MDR-HW700DSの発売開始は2013年10月であり、その当時は上記の仕様で問題なかったのかもしれないが、2016年現在では、これははなはだ不十分な仕様であると言わざるを得ない。
 例えば、JCOMの「ケーブル4K」やVODで配信されている4K動画は、3840×2160の60pだが、これだとMDR-HW700DSの対応範囲外であるため、パススルーできない。MDR-HW700DSにこの4K信号を入力すると、1920×1080の60pにダウンコンバートされてしまう。これは、4K動画を見慣れている者からすると、ド近眼かつ老眼も来ているおっさんの身であるにもかかわらず、パッと見で判別できるほどの劣化である(実際、接続後の最初の確認時にすぐ気づいた)。
 また、Amazonプライム・ビデオの4K/Ultra HDの動画は3840×2160の30pであり、これはMDR-HW700DSでパススルーできるはずの信号だが、やってみると音声は出るが映像は表示されず、TV画面は真っ黒になってしまった(理由は不明。相性の問題か)。
 MDR-HW700DSは「4Kパススルーに対応」をうたってはいるが、「4K」の範囲についてはウェブサイト上にきちんと掲示しており、それをよくよく見れば、今や一般的とも言える3840×2160の60pに対応していない、イマイチな仕様であるということに気づけたはずで、そこをきちんと確認せずに衝動買いしてしまった私が悪い。
 そもそも4K対応でAV環境を一新したがために持っていたワイヤレスヘッドフォンが使えなくなったわけで、そこへ新たにワイヤレスヘッドフォンを導入したら4Kが見られなくなるというのは本末転倒である。

解決策

 せっかく買ったMDR-HW700DSだけど使えないし返品しようかしら、でもやっぱりワイヤレスヘッドフォンの利便性は捨てがたいものがあり……と、いろいろ考えた結果、ダサくて死にそうな方法ではあるが、一応の解決を見た。
 その方法とは、HDMI分配器の導入である。

No Item.

 上記のHDMI分配器を、今度は仕様表をよくよく見て、3840×2160の60pに対応していることを確認してからAmazonで購入し、さっそくシステムに追加した。
 
av-setting03.jpg
 
 上記の構成でスピーカーから音を出す場合の信号の流れは以下のようになる。
 

signal-C.jpg

signal-D.jpg

 
 CはTVを見る場合で、信号の流れはHDMI分配器のないAの場合と同じである。
 DはJCOMのSTB(HumaxのUHD-2500)を見る場合だが、Bとの違いは、TVのHDMI入力に入力されるのが、MDR-HW700DSをパススルーしたものではなく、HDMI分配器で分配された、MDR-HW700DSを通っていない映像信号であること。このHDMI分配器は3840×2160の60pにも対応しているため、JCOMの4K動画も、もちろんAmazonプライム・ビデオの4K/Ultra HDの動画も、問題なくTVに表示されることになる。
 
 また、上記の構成でワイヤレスヘッドフォンから音を出す場合の信号の流れは以下のようになる。
 

signal-E.jpg

signal-F.jpg

 
 EはTVを見る場合で、MDR-HW700DSのプロセッサの電源を入れるだけで、プロセッサの光デジタル出力から音声信号が出力されることはなくなり、そのためスピーカーから音が出ることはなく、よってヘッドフォンからのみ音が出ることになる。
 FはJCOMのSTBを見る場合だが、Eと同様にスピーカーから音は出さずにヘッドフォンからのみ音を出すためには、AVアンプVSA-830の電源をOFFする必要がある。VSA-830には、電源をOFFしたときにHDMI信号をスルー出力する機能(スタンバイスルー機能)、および、非常にわかりにくいが、シアターモードではない時(HDMI CECが働いていない、つまり、TVの電源だけがOFFされている時、もしくは、AVアンプの電源だけがOFFされている時)に音声をアンプから出力するのか(設定は「HDMI AMP」)、HDMIに音声信号をのせたままスルー出力するのか(設定は「HDMI THROUGH」)、設定する機能(HDMIスルー機能)がある。これらの設定を、スタンバイスルー機能をON(電源OFF時HDMIをスルー出力する)、かつ、HDMIスルー機能を「HDMI THROUGH」(シアターモードでない時HDMIに音声信号をのせたままスルー出力する)に設定しておくことで、AVアンプの電源をOFFすることで、スピーカーから音を出さず、ヘッドフォンからのみ音を出すことができる(このとき、HDMI分配器で分配され、TVに送られるHDMI信号にも音声信号が含まれることになるが、TVの「優先スピーカー」の設定を「テレビスピーカー」ではなく、「AVシステムスピーカー」にしておくと、TVのスピーカーから音声が出力されることはない)。

落ち穂拾い

 このような方法で、MDR-HW700DSが使えるようになったわけだが、追加で買ったHDMI分配器とHDMIケーブルを合わせると4000円強というけっこうな出費となった。そもそもAVアンプにHDMI出力が2つあればHDMI分配器など必要なかったわけで、1年前にHDMI出力が1つしかないVSA-830ではなく、HDMI出力を2つ備える、1ランク上のVSA-1130を買っておけばよかったと思わないでもないが、両者の実売価格の差は約5万円、それが4000円で済んだと考えれば御の字か。
 今のところ正常に動作している、このHDMI分配器だが、筐体がとても熱くなっているのが心配である。聞いたこともないメーカー製だという点も心配。大丈夫かしら。
 また、上記システムの構成を眺めていて、TVとMDR-HW700DSのプロセッサの間が光デジタルケーブルで接続されているため、ここに、もともと持っていたATH-DCL3000を接続できることに気づいた。もともと持っていたワイヤレスヘッドフォンが使えなくなったので、新たに別のワイヤレスヘッドフォンを買ったら、そのせいでもともと持っていた方も使えるようになるという、なんだかよくわからない状況に。
 しかし、実際ここにATH-DCL3000を接続してみると、電源OFF時に音声信号をスルー出力する機能などないため、ワイヤレスヘッドフォンを使わない時にも常にプロセッサに電源を入れておかないと、TVを見るだけでもスピーカーから音が出ないことになる。にもかかわらず、ATH-DCL3000には解除できないオートパワーOFF機能があり、例えばSTBを視聴していて、TVからの音声信号が入力されない状況になると5分ほどで勝手に電源がOFFされてしまう。そこからSTB視聴をやめてTVを見たくなった場合、本来ならHDMI CECの働きで、TVの入力を切り替えるだけでいいはずなのに、いちいち落ちているATH-DCL3000の電源を入れ直さなければならず、非常に不便であり、実質的には使えないということになる。そのことに気づき、なんだかホッとしたような、不思議な気持ちである。
 肝心のMDR-HW700DSだが、音質やバーチャルサラウンドの効果は、開放型と密閉型というヘッドフォンの構造的違いに起因すると思われる印象の差こそあれ、10年も前の機種であるATH-DCL3000と比較しても劇的な進化は感じられず、やっぱりそこそこといったところだが、これまたやっぱりワイヤレスという点はとても便利で、快適に利用している。


最終更新時間:2016年06月21日 19時42分09秒